XP祭り2024で『Tidy First?』のお話に参加した

XP祭り 2024で、かくたにさんが「Kent Beck の新刊『Tidy First?』についてお話しましょう」といわれていたセッションに参加した。

confengine.com

スライドはなく、かくたにさんの話に対して Discord でのチャット中心でワイワイしたり、質問を拾ってもらったりする面白い試みのスタイルだった。

本編で話されていたようにキーワードとしては Tidying, Kent Beck, XP の3つ。そのあたりを踏まえつつ、セッション内でよく参照されていた記事は以下。

beetroot.co

ここではソフトウェアを変更できる人を "changers" と呼び、要求を出して変更を待つ人を "waiters" と呼んでいるものの、かくたにさんはこのあたりの名称を使うことに配慮して言葉を選んでいる感じだった。おそらく XP の Whole Team に対して、分断を呼んでいるような構図だったのが引っ掛かっていたのかなと聞いていたけれど、時間も限られていたので質問はせずにいた。このあたりはまた別途話す機会があると嬉しい。

自分が拾ってもらった質問は以下の2つ。

Q1. Refactoring ではなく Tidying を前面にしている意図はあるでしょうか?

Refactoring は意味の希薄化が進んでいる部分のある用語であり、誤解がないよう Tidying という語彙が選ばれているという理解をしました。 (あっているのかな?)

bliki-ja.github.io

また Refactoring は Test-First Development や Test-Driven Development といったテスト文脈がついてくるが、そういったテストコードありきの話ではなく、もっとそんなに腰を据えずカジュアルにちゃちゃっとできるレベルのコードの「お片付け」を日常的に行えるものを Tidying と指しているようでした。ソフトウェアを通じた人間の繋がりを良くしていく、個人レベルからの始め方のひとつとして本書サブタイトルの「A Personal Exercise in Empirical Software Design」はなるほどと思いました。

Q2. タイトルが「Tidy First?」と疑問符で終わっているのはなぜでしょうか?

Kent Beck のキャラクターが現れているというのが面白い解釈として聞いていました。「まず片付けから始めるんだ」と決め打ちで押し出すのではなく、「まず片付けから始める?それとも?」みたいな疑問として投げかけるのが本タイトルへのあらわれ。実際のところソフトウェアの仕事は自問自答の繰り返しの中にあって、「片付けから始める」のは選択肢のひとつとして「?」をタイトルで表すのはセンスのあらわれとしてよく理解できました。また、ここでボブおじさんだったら、もっと語感が強い感じになっていたかもというのはさらに面白い解釈でした。執筆者重要。

hasumikin さんの言葉を借りれば「だらっといい話」を聞けた45分でした。楽しかったです。

そのあとはライトニングトークスに同僚の amapyon が出ていたので聞いていたのですが、amapyon の LT はテーマ一本の単語をきっちり肉付けしていくタイプで、今回も「勘違い」について非常に学びになるトークでした。

余談ですが私は『Tidy First?』の原書の紙版を Amazon で購入していたのですが、発送遅延の通知がちょくちょく来て、どうもベルギーからの発送で3週間くらい掛かっていたような (同僚の iepyon と同じくほとんど未読) 。手元に原書を持ってみようという人への参考までに。

スポットでの参加となりましたが、楽しい XP祭り2024 をありがとうございました。