少し前に Offers さんより、キャリアをテーマにしたアドベントカレンダーというオファーをいただいて Offers Magazine に執筆した。ちょうど1年ぶりの文筆物。
昨今の自分のキャリア形成は「技術コミュニティ」と不可分なところがあるので、そのあたりにフォーカスを当てた記事になります。良ければご一読ください。
また前回に続き、編集の峪さんには、執筆のオファーから編集多岐に渡りお世話になりました。ありがとうございます。
少し前に Offers さんより、キャリアをテーマにしたアドベントカレンダーというオファーをいただいて Offers Magazine に執筆した。ちょうど1年ぶりの文筆物。
昨今の自分のキャリア形成は「技術コミュニティ」と不可分なところがあるので、そのあたりにフォーカスを当てた記事になります。良ければご一読ください。
また前回に続き、編集の峪さんには、執筆のオファーから編集多岐に渡りお世話になりました。ありがとうございます。
この記事は「ESM Advent Calendar 2021」の1日目の記事です。
RuboCop のバックエンドでは、Ruby を解析して AST (抽象構文木) の Ruby オブジェクトとして扱えるようにする Parser gem を使っています。Parser gem のメンテナンスは、Ruby の parse.y に入った構文のアップデートを元に行っています。本エントリでは parse.y の観察を元にして、クリスマスのリリース予定までカウントダウンとなっている Ruby 3.1 構文のアップデート (2021年12月1日時点) をまとめてみます。
所感としては、Ruby 3.1 ではいくつかの構文への省略記法を中心に導入されるといった印象です。
ruby/ruby@c60dbcd で導入されました。
値を代入した変数を Hash リテラルの要素に記す際に、変数名を Hash のキーとして、値を省略できるようになります。
a = 1 b = 2 {a:, b:} #=> {:a=>1, :b=>2}
以下と同意です。
a = 1 b = 2 {a: a, b: b} #=> {:a=>1, :b=>2}
個人的には、ES6 のプロパティのショートハンドという例もあり、キーと値を "DRY" にできるので良さそうという印象を持っていますが、明示的に書くという見方の好みもありそう?といった印象です。
ruby/ruby@4adb012 で導入されました。
ブロック引数を移譲する際にブロック変数名を省略できるようになります。
def foo(&) bar(&) end
Ruby 3.0 までは引数に何か名前が必要です。
def foo(&block) bar(&block) end
個人的には、&block
か &proc
以外ほとんど名前をつけることなさそうなので、そういった情報落ちがない (たぶんほとんどの場合) はこの &
という象徴で十分良さそうに思っています (移譲専用というのが少し残念に思うくらい良さそう) 。
なお、匿名ブロック移譲のメソッド定義の外で bar(&)
単独で使おうとすると no anonymous block parameter
エラーが発生します。
ruby/ruby@2186347 と ruby/ruby@fa87f72 で導入されました。
パターンマッチの新構文となる pin オペレータをサポートするようになります。大元のサンプルから持ってくると ^
を使った式をこんな感じでパターンマッチ中で取れるようになります。
Prime.each_cons(2).lazy.find_all { _1 in [n, ^(n + 2)] }.take(3).to_a #=> [[3, 5], [5, 7], [11, 13]]
ruby/ruby@31794d2 で導入されました。
endless メソッド定義の本体メソッド呼び出しの括弧が省略可能になります。
def foo = puts 'Hello'
Ruby 3.0 までは引数にカッコが必須です。
def foo = puts('Hello')
ruby/ruby@ecb6d6a で導入されました。
1行パターンマッチのメソッド呼び出しの括弧が省略可能になります。
[1, 2] => a, b
Ruby 3.0 までは右辺にカッコが必須です。
[1, 2] => [a, b]
ruby/ruby@13a9597 で導入されました。
Arguments Forwarding のメソッド仮引数のカッコが省略可能になります。
def foo a, ... end
Ruby 3.0 までは仮引数にカッコが必須です。
def foo(a, ...) end
またデフォルト引数と Arguments Forwarding を一緒に定義できるようにもなっていました。これはカッコの有無に関わらず、Ruby 3.0 では構文エラーだったものです。
def foo(a, b = 42, ...) end
ここで紹介した構文アップデートは Parser gem 3.0.3.1 までで対応済みで、RuboCop で使おうとすると匿名ブロック移譲でエラーになるのが現状です。修正パッチは PR 送付済みですので、クリスマスリリースには RuboCop でもひととおりの Ruby 3.1 構文は使えるようになっていると思います。
なお、Ruby 3.1 は開発版となります。ちょっと試してみようという場合、rbenv であれば以下でインストールができます。
% rbenv install 3.1.0-dev
以上、Ruby 3.1 の先行プレビュー記事でした。クリスマスリリースが楽しみですね。
「ESM Advent Calendar 2021」の 2日目は @m_pixy のエントリです。
先日、Ruby 3.1 で起きる each_cons
と each_slice
の非互換について記しましたが、RuboCop で非互換の影響を受ける部分とその対処について記しておきます。
対象となる組み合わせは Ruby 3.1 と RuboCop 1.22.2 以下です。
RuboCop 1.22.2 までは以下のパッチが当たっていません。
そのため、Layout/BlockAlignment
cop が有効になっている場合は、Ruby 3.1 での rubocop
コマンドの実行で以下のエラーが起きえます。
# ./lib/rubocop/cop/layout/block_alignment.rb:97:in `start_for_block_node' # ./lib/rubocop/cop/layout/block_alignment.rb:82:in `on_block' # ./lib/rubocop/cop/commissioner.rb:100:in `public_send' # ./lib/rubocop/cop/commissioner.rb:100:in `block (2 levels) in trigger_responding_cops' # ./lib/rubocop/cop/commissioner.rb:160:in `with_cop_error_handling' # ./lib/rubocop/cop/commissioner.rb:99:in `block in trigger_responding_cops'
(デフォルトで有効になっている Cop なので、遭遇率はそれなりにあるかもしれません。)
この問題に遭遇した場合の対処方法を列挙します。
これが本手です。問題が解決されている RuboCop 1.22.3 以上にアップグレードしてください。
Layout/BlockAlignment
cop を無効にする.rubocop.yml へのワークアラウンドとして、.rubocop.yml に以下を指定してください。
Layout/BlockAlignment: Enabled: false
RuboCop へのユーザーフィードバック にあったように、Ruby 2.4 サポートをしたい場合は RuboCop 1.12 までしかアップグレードできません。こういったアップグレードできない事情がある場合のひとつの選択肢になります。
例示しないのですが upstream の修正パッチ 同様のモンキーパッチをアプリケーションで当ててください。将来的に実装が変わる可能性があるため、おすすめしないのですが Ruby 2.4 と Ruby 3.1 を同時にサポートして Layout/BlockAlignment
cop を有効にしたいケースの選択肢になります。
いちおう他にも CI で問題を解決するという手段もありますが、本手としては RuboCop 1.22.3 以上にアップグレードするになります。また、Ruby 3.1 での each_cons
の挙動の変更についてフィードバックを重ねるというのも考えはしたものの、each_cons
の挙動変更自体はユーザーにとって自然な方向に向かっていくものだと思うので、付いていける変更具合であれば付いていきたい気持ちから、私の方でフィードバックを重ねることはしないことにしました (もし困っていてお気持ちのある方がいれば、お任せます) 。
なお、この問題について、Rails/OSS パッチ会で osyo さんや amatsuda さんに相談に乗ってもらいました。ありがとうございました。
次回の Rails/OSS パッチ会は 2021年12月21日(火) です。参加は以下の Discord URL までどうぞ。
銀座Rails#39に登壇した。
主催者の morimorihoge さんからは、3年目あたりを経ったエンジニアに響くような話を題材にというオファーで頂いていた。
11/19の銀座Rails#39 @koic さん登壇テーマは僕が聞きたくてお願いしました。銀座Railsが始まったころに新人エンジニアだった人が、働き始めて3年経った今刺さるような内容になってくれればと思います #ginzarails :銀座Rails#39に登壇します https://t.co/sJUwAgj4Ec
— Masato Mori (@morimorihoge) 2021年10月29日
"3年経った" がひとつのキーワードになるものの、参加者にはベテランもいるわけで「3年目をひとつの節目に、3年目以降いつなんどき遭遇するかもしれないポイント」みたいな形で話を構成してみた。当日のスライドは以下。
静的サイトジェネレータ繋がりの yasulab さん、okuramasafumi さんから始まり、自分の方も okuramasafumi さんのライブコーディングセッションから、名付けで悩むシーン (名付けは難しい!) をメンション先とさせてもらったりと、銀座Railsとしても部分部分でリンクした話になっていたのではと思っている。
登壇中に気づいたことだけれど、意識的、無意識的に『リファクタリング』や『Patterns of Enterprise Application Architecture』といった、マーチン・ファウラーの足跡からの引用が多めだったみたいで、マーチン・ファウラーの影響力の大きさを再認識する機会にもなりました。マーチン・ファウラーは偉大。
今回発表の機会をもらって話したものの、なかなか現実は難しく私自身うまくできているところの話や失敗談も入れた一方で、現在進行形であまり手が回っておらず絶賛進行中の話もあったりしていて、本編の内容を一緒に解決していこうという方がいれば、中途/新卒、ビジネスパートナーいずれの立ち位置もエンジニア募集中ですのでお声がけください (直近ですと私や colorbox メンバーたちが関わっているプロジェクトへの参画メンバーを熱烈募集中です) 。
楽しかったです。主催者の morimorihoge さんはじめ、発表者、参加者、スポンサーのみなさんありがとうございました。
2021年11月19日(金) に開催される「銀座Rails#39」に登壇します。
銀座Rails#9 以来、30回ぶり2度目のゲスト登壇です。
テーマは、「動いた!」の先へ踏み出す、システムのメンテナビリティ向上の基礎技術です。
主催者の森さんからは、新卒から3年経ったくらいのタスクをこなせるようになったエンジニアに向けて、さらに成長していくためのとっかかりや抑えておくべきスキル、考え方など 「エンジニアとして働けるようになってからのレベルアップ」についての話をしてもらいたいとのオファーを頂いているので、そんな感じの話をする予定です (まだこの世にスライド1枚もないですが) 。
よければ遊びに来てください。
先日、RuboCop の ruby-head CI が落ちていたので、bugs.ruby-lang.org にフィードバックしていたイシューが以下。
osyo さんがコメントで教えてくれた PR が以下で、each_cons
と each_slice
の戻り値が nil から self に変わっているというものだった。
以下は破壊的変更が起きる (単純化した) サンプルです。ブロックで条件によって break
を使った戻り値を使うか、each_cons
としての戻り値を使うか判定するようなロジックが遭遇したケースです。
% ruby -v ruby 3.0.2p107 (2021-07-07 revision 0db68f0233) [x86_64-darwin19] % irb irb(main):001:0> [1, 2, 3].each_cons(2) { |i| break i if true} => [1, 2] irb(main):002:0> [1, 2, 3].each_cons(2) { |i| break i if false} => nil
% ruby -v ruby 3.1.0dev (2021-10-26T00:30:42Z master 7d4c59203f) [x86_64-darwin19] % irb irb(main):002:0> [1, 2, 3].each_cons(2) { |i| break i if true} => [1, 2] irb(main):003:0> [1, 2, 3].each_cons(2) { |i| break i if false} => [1, 2, 3]
たしかに振る舞いとして戻り値 nil より自然になる気もするが、Ruby 3.1 向けに進んでいる NEWS などで見かけなかったので、影響をどれくらい加味された変更かよく分かっていなかった。
Rails/OSS パッチ会で osyo さんと NEWS にあるといいですねと話していて、osyo さんがパッチを出してくれたのが以下。
ということで、こういったケースで Ruby 3.1 での非互換変更として影響を受ける可能性があるので、いちおう each_cons
と each_slice
で同様のことを行っていないか見ておくと良いです。
(なお、最初に遭遇した RuboCop の方はそもそものロジックが 🤔 な部分もあったので、Ruby 3.1 互換のロジックに修正済みです。)
勤務先で行っている今月のパッチ会で、Discord に Rails/OSS パッチ会のサーバーを立てていました。
これまでやりとりに使っていた Idobata の rails ルームが 11 月中旬に閉鎖されることになったためです。Idobata を情報チャンネルとしていた方は Discord への引越しをお願いします (勤務先の開発者ブログでも後日案内します) 。
Discord の招待 URL は以下です。これからパッチ会に参加してみようという方もぜひどうぞ。
Discord を選んだ理由は、テキストチャンネル、音声チャンネル、画面共有と欲しいものが一式揃っていたことと、yahonda さんから Asakusa.rb での活用実績を聞いて良さそうとしたことです (ありがとうございます!) 。Slack と Discord で悩んでいたところでしたが、あまり悩んでいるのに時間を浪費しても仕方ないのでサッと決めて進めました。